2019 年 80 巻 8 号 p. 1487-1491
症例は70歳台,女性.糖尿病性慢性腎不全にて維持透析中で,狭心症にて冠動脈バイパス術の既往あり.上部消化管内視鏡検査にて胃前庭部に粘膜下層浸潤を示唆する早期癌を認めた.腹部CT検査で腹腔動脈,脾動脈,短胃動脈などに広範囲の石灰化を認めた.手術は腹腔鏡下に幽門側胃切除,Billroth I法再建を施行した.術後の上部消化管内視鏡検査で残胃粘膜の広範囲壊死を認め,造影CT検査では胃壁の造影不良,断裂を認めたため,残胃壊死と診断し術後13日日に残胃全摘術を施行した.しかし,再手術後に十二指腸断端の縫合不全を発症し,全身状態の悪化により,初回手術より23日目に死亡した.自験例は脾動脈,短胃動脈の広範囲な石灰化が残胃壁の血流低下,壊死を引き起こした一因と推測された.胃切除後の残胃壊死は非常に稀な合併症であるが,一旦発症すると重篤な経過を辿ることが多く,早期診断,早期再手術が肝要と考えられた.