2019 年 80 巻 9 号 p. 1617-1622
転倒4週間後に発症した遅発性血胸と外傷性横隔膜ヘルニアに対し緊急手術を施行した1例を経験したので報告する.症例は70歳,女性.自宅で転倒し左側胸部を打ち,翌日に近医を受診し左多発肋骨骨折の診断にて経過観察となったが,胸水貯留傾向があり受傷15日後に当科を紹介受診.胸腔穿刺にて血性排液550mlを認めたが,肺の十分な拡張が得られたため外来経過観察とした.受傷28日後に咳嗽と呼吸苦を主訴に当院を再受診.左大量胸水を認め,造影CT検査にて左第9肋骨骨折部周辺に血管外漏出を伴う左血胸増悪を認めたため,緊急に胸腔鏡下血腫除去術を施行.8cmの小開胸を追加し,横隔膜に1cmのヘルニア門と同部より突出する大網組織を認め,外傷性横隔膜ヘルニアと診断した.大網を腹腔内に還納し横隔膜ヘルニアを修復した.術後経過は良好で第11病日に退院した.本症例は,呼吸変動に伴い骨片が繰り返し横隔膜に接触することで遅発性に横隔膜ヘルニアをきたしたものと考えられた.