日本臨床外科学会雑誌
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症例
肺癌に対する免疫チェックポイント阻害薬使用による直腸S状部穿孔の1例
近石 和花菜松橋 延壽高橋 孝夫田中 善宏山口 和也吉田 和弘
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2019 年 80 巻 9 号 p. 1715-1720

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抄録

症例は88歳,男性.他院でStage IV A肺腺癌に対して免疫チェックポイント阻害剤のペムブロリズマブで加療していた.6コース投与後に血便・下痢をきたし,下部内視鏡検査で直腸S状部に潰瘍を認め,大腸炎と診断された.プレドニゾロン投与で軽快したが,治療開始31日後に強い腹痛が出現しCT検査で腹腔内遊離ガスを認め,消化管穿孔の疑いで当院へ救急搬送された.緊急下部内視鏡検査で直腸S状部に深い潰瘍を認め,同部位の穿孔を疑い緊急手術を行った.直腸S状部の穿孔部位はピンホール状であり便汁の漏出は認めず,腸切除なく穿孔部を縫縮し人工肛門を造設した.術後18日目に転院した.免疫チェックポイント阻害剤は様々な進行癌の治療に有効な一方,免疫関連有害事象(irAE)という特有な副作用をもたらす.大腸炎・下痢も代表的であり,ステロイド治療で軽快したにも関わらず,大腸穿孔をきたした症例を経験したため報告する.

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© 2019 日本臨床外科学会
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