日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹膜播種再発との鑑別が困難であった縫合糸による腹腔内異物肉芽腫の1例
孫 起和金岡 祐次前田 敦行高山 祐一高橋 崇真宇治 誠人
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2020 年 81 巻 1 号 p. 48-53

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抄録

症例は72歳の男性で,直腸癌同時性肝転移に対して,術前化学療法としてmFOLFOX6+Panitumumab療法を行った後に腹会陰式直腸切断術,肝拡大左葉切除術および肝後上区域部分切除術を施行した.術後7日目に骨盤死腔内への小腸嵌頓による腸閉塞のため回盲部切除術を施行した.術後6カ月目のCTでは右下腹部に20mm大の単発結節を認め,FDG-PETでも同部位に集積を認めた.腹膜播種再発を疑い手術を行ったところ,回腸結腸吻合部の間膜内に腫瘤を認めたため,吻合部を含めた腸管切除術を施行した.病理組織所見では悪性像は認めず,瘢痕組織に囲まれた膿瘍を伴う,縫合糸を取り囲む多核巨細胞を認め,異物肉芽腫と診断した.回盲部切除術を行った際に間膜を閉鎖した縫合糸による異物反応と考えられた.悪性腫瘍術後に再発との鑑別が困難であった縫合糸による腹腔内異物肉芽腫を経験したため報告する.

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