2020 年 81 巻 1 号 p. 54-59
症例は70歳,男性.咽頭痛・嚥下痛の精査で中咽頭癌と診断されたが,頸胸腹部CT検査で気管背側に2cm大の腫瘤影も指摘され,CTガイド下針生検を施行したところ,60歳時に根治切除を行った胸部食道癌の再発と診断された.PET-CT検査では同腫瘤影に対してFDGの異常集積を認めたが,他部位に転移を示唆するような所見はなかった.中咽頭癌および食道癌局所再発と診断し,中咽頭癌領域を含めた放射線単独療法を総線量60Gy/30Frにて施行した.照射後6カ月で気管背側の腫瘤は消失し,その後も再増大なく完全奏効が得られた.2年が経過したところで咽頭壁の肥厚を認め中咽頭癌の再発と診断され,その後3カ月で死亡した.食道癌が根治切除後5年以上経過して再発することはまれであり,若干の文献的考察を加え報告する.