2021 年 82 巻 1 号 p. 145-150
症例は57歳,男性.下腹部痛と発熱を主訴に当院を受診した.胸腹部CTにて左肺S8と肝S4の2箇所に膿瘍,S状結腸に壁肥厚が認められ,下部消化管内視鏡検査にて肺膿瘍・肝膿瘍を合併したS状結腸癌(cT3N0M0 Stage IIa)と診断した.肝膿瘍穿刺にてα-streptococcusが検出され,抗菌剤投与により全身状態が改善した後にS状結腸切除術(D3)を施行した.病理組織診断はtub1,pT3N0M0 Stage IIaで,術後補助化学療法は行わずに経過観察中であるが,術後2年経過し膿瘍の再燃や大腸癌の再発は認めていない.今回,肺膿瘍・肝膿瘍を合併した大腸癌の1例を経験したので報告する.