日本臨床外科学会雑誌
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症例
嚢胞穿刺と硬化療法で十二指腸閉塞症状が消失した14cm大の腎嚢胞の1例
白水 良征藤原 省三阿南 勝宏藤田 文彦赤木 由人
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2021 年 82 巻 1 号 p. 187-193

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抄録

症例は71歳の男性で,1週間前から食欲不振,嘔吐が持続し当院を受診した.腹部CTにて十二指腸下行脚を圧排する14×13cmの右腎嚢胞ならびに著明な胃の拡張を認めた.十二指腸の通過障害による腸閉塞症状をきたした巨大腎嚢胞と診断した.経皮的嚢胞ドレナージを行い,硬化療法として塩酸ミノサイクリン(以下MINO)200mgを嚢胞内に注入した.第7病日の腹部CTでは嚢胞は著明に縮小し,十二指腸下行脚の圧排も改善していた.治療後は消化器症状の再燃を認めず,第10病日に退院となった.腎嚢胞は大半が無症状なことから治療対象となることは少ないものの,有症状の場合は治療対象となる.有症状の中でも腸閉塞症状は極めて稀であり,これまでの報告例も極めて少ない.十二指腸閉塞症状を伴う巨大腎嚢胞に対して嚢胞ドレナージと硬化療法により,良好な治療効果が得られた1例を報告する.

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