2021 年 82 巻 1 号 p. 32-37
成人鼠径ヘルニアに対するLichtenstein法(以下,本法)は世界的なガイドラインにおいて強く推奨されているが,現在も日本での施行数は少ない.われわれは2010年以降,積極的神経同定とpragmatic neurectomy,自己接着性メッシュへの追加固定を行う本法を継続している .2014年から2018年までの5年間に当院で本法を施行した患者を対象に,術中の神経対処とメッシュの追加固定および治療成績を後方視的に検討した.その結果,腸骨下腹神経,腸骨鼠径神経,陰部大腿神経陰部枝をそれぞれ73%,69%,85%の症例で同定し,腸骨下腹神経を49%の症例で切除した.メッシュの追加固定は全例に行った.手術と関連する合併症は再発1例を含む2例のみであり,慢性疼痛は認めなかった.積極的神経同定とpragmatic neurectomy,自己接着性メッシュへの追加固定を行う本法を施行し,良好な治療成績を得ている.