2021 年 82 巻 1 号 p. 79-84
症例は67歳,女性.繰り返す食後の腹部膨満感と腹痛を主訴に当院を受診した.腹部造影CTで左上腹部の小腸に限局性の拡張を認め,小腸造影検査では中部小腸に嚢状の拡張部と造影剤の滞留を認めた.経口ダブルバルーン小腸内視鏡検査では空腸に内腔の拡張を認めたが,明らかな閉塞起点は認めなかった.空腸憩室の術前診断で腹腔鏡補助下小腸部分切除術を施行した.病理組織学的検査で空腸重複腸管と診断した.術後経過は良好で第5病日に退院した.術前にあった食後の腹部膨満感,腹痛は術後に改善した.小腸重複腸管は小児期に発見されることが多く,また部位では回盲部が多いとされ,成人で診断される空腸重複腸管は稀である.今回,成人で発症した空腸重複腸管に対して腹腔鏡補助下小腸切除術を施行した症例を経験したので報告する.空腸重複腸管は稀な病態であるが悪性化の可能性もあり,空腸憩室の術前診断ができれば腹腔鏡下切除術を考慮するべきである.