2021 年 82 巻 1 号 p. 72-78
症例は42歳,男性.以前より胃穹窿部に粘膜下腫瘍の指摘があり,精査の方針となった.上部消化管内視鏡検査では胃穹窿部に正常粘膜に覆われた隆起を認め,cushion sign陽性のため,リンパ管腫などの軟性の腫瘍を疑った.腹部造影CTで胃穹窿部大彎に胃壁内から壁外へ突出する径50mm大の多房性の嚢胞性病変を認めたが,内部に充実成分は認めなかった.診断的治療目的に腹腔鏡下胃局所切除術を行った.病理組織像で嚢胞壁構造が胃壁に類似し,胃および肺上皮の特徴を有したことから,前腸由来の胃重複症と診断した.胃重複症はそのほとんどが小児期に診断される稀な疾患であり,成人では出血や癌化のリスクを伴う.画像検査のみでの正確な診断は困難とされるため,胃重複症が疑われる場合には診断を兼ねた積極的切除を考慮すべきであり,腹腔鏡下手術の良い適応と考える.