2021 年 82 巻 1 号 p. 93-97
患者は68歳,男性.1週間前からの食思不振を主訴に受診し,CT所見から腸間膜内の膿瘍と診断され入院となった.便培養は陰性だった.エルシニア感染を疑い,セフトリアキソンを使用したが膿瘍の縮小を認めず,第6病日に開腹術を行った.遠位回腸に接する7×8cmの腫瘤を腸間膜内に認め,回腸とともに切除した.病理組織学的検索では,腫瘤は膿瘍と周囲の腫大リンパ節からなっていたが,膿瘍自体にリンパ節組織は存在しなかった.膿汁培養にてYersinia enterocolitica を検出した.エルシニアによる腸間膜内の膿瘍は本症例を含め9例報告されており,うち8例が手術を施行されていた.エルシニア感染症は保存治療が原則だが,腸間膜内に膿瘍形成して薬物治療が奏効しない場合には,外科的治療に踏み切ることが治療期間短縮につながると考えた.