2021 年 82 巻 2 号 p. 373-378
症例は80歳,男性.2017年6月に黒色便を認め,近医を受診し貧血を指摘された.7月に上部消化管内視鏡を施行し食道胃接合部に半周性のtype2病変を認めた.生検で低分化腺癌,さらに免疫染色でクロモグラニンA,シナプトフィジンなどが陽性であり,神経内分泌癌(neuroendocrine carcinoma:NEC)と診断された.画像で遠隔転移はなく,当時の本邦ガイドラインを参考に2017年8月に下部食道噴門側胃切除術を施行した.病理結果はStage IIの食道胃接合部神経内分泌癌で一部に低分化腺癌を認めた.高齢ということもあり,術後は補助化学療法なしで経過を見ているが,3年を過ぎた現在でも再発なく経過観察中である.今回,食道胃接合部に生じた比較的稀な神経内分泌癌を経験したので報告する.