2021 年 82 巻 3 号 p. 520-524
症例は72歳,男性.鎖骨下静脈経由でペースメーカ植込み術(DDD)を施行した.数年前より易疲労感と労作時息切れが出現し増悪した.心エコーで心室リードの三尖弁後尖への干渉,三尖弁輪拡大,右室拡大,三尖弁逆流IV度を認めた.23年前に留置した心室ペースメーカリードによる重度三尖弁閉鎖不全症と診断した.手術所見では,心室リードが三尖弁後尖と後乳頭筋に高度に癒着し,三尖弁の可動を著しく制限していた.弁変形が強く形成術は困難と判断した.リードを損傷しないように鋭的に剥離し,リードを人工弁縫着輪外で前尖と中隔尖の交連部に移設固定する方法により,リードを切断することなく温存して三尖弁置換術を行った.また,術前肝うっ血や肝機能障害を認めず,かつ左心機能が維持されている症例は良好な予後が期待できるので,定期的心エコーで経過観察し,時期を逸することなく重症化する前に手術を行うことが重要である.