2021 年 82 巻 3 号 p. 635-641
症例は56歳,男性.右季肋部痛を主訴に受診し,ダイナミックCTにて肝右葉に動脈相での早期濃染される直径84mmの腫瘍,および門脈右枝まで進展する門脈腫瘍栓を認めた.AFP・PIVKA-IIも高値であり肝細胞癌と診断,Vp3の門脈腫瘍栓を伴うため,ソラフェニブの投与が開始された.ソラフェニブ投与5カ月後のCTでは,肝右葉の腫瘍は直径50mmに縮小し,動脈相での早期濃染を認めなくなっていた.また,門脈右枝の腫瘍栓も縮小していた.しかし,重度の下痢のためソラフェニブの継続が困難となり切除を検討,病勢コントロールは得られており根治切除可能と判断し,肝右葉切除,門脈腫瘍栓摘出術を予定した.術中所見では門脈右枝内に腫瘍栓は認めず,肝右葉切除のみ施行した.病理結果では,主腫瘍および末梢の門脈内の腫瘍細胞はすべて壊死しており,病理学的完全奏効の状態であった.現在,術後2年3カ月を経過し,無再発生存中である.