2021 年 82 巻 5 号 p. 995-999
症例は75歳の女性で,腹痛・嘔吐のため当院受診2日前に近医を受診し,便秘として浣腸を施行されたが症状は軽快せず,当院を受診した.左下腹部に圧痛を認め,腸管と思われる腫瘤を触知した.腹部CTでは左鼠径部に脱出した腸管,および石灰化と思われる高輝度の物質を認めた.左鼠径ヘルニア嵌頓と診断し,緊急手術の方針とした.左内鼠径ヘルニアの嵌頓を認め,嵌頓していた腸管は魚骨により穿孔していた.穿孔部を中心に小腸部分切除を行い,鼠径ヘルニアに対してはMcVay法にて修復した.術後経過は良好で,術後15日目に独歩退院した.本症例の発生機序としては,以前より存在していた内鼠径ヘルニアの脱出腸管に魚骨が到達した際に,腸管の移動性の自由度が制限されていたために魚骨が通過できず穿孔が生じ,さらに,消化管穿孔のため腸管壁が炎症性に肥厚したため腹腔内に還納できなくなり嵌頓したものと考えられた.