2021 年 82 巻 6 号 p. 1188-1193
成人の十二指腸壁内血腫は比較的稀な病態であり,近年では保存的治療が第一選択となっている.われわれは早期の手術介入が有効であった症例を経験したため報告する.症例は33歳の男性で,前日からの嘔吐と心窩部痛を主訴に当院を受診した.腹部造影CTと消化管内視鏡検査で,十二指腸下行脚の壁内血腫による十二指腸狭窄と診断された.入院の上,保存的治療を開始したが翌日に症状が増悪し,血液検査で炎症反応と膵酵素の著明な上昇を認めた.腹部造影CTで再評価したところ,血腫の著明な増大と後腹膜への液体貯留を認め,急性膵炎を併発していた.保存的治療の限界と判断し,緊急手術を施行した.Kocher授動にて膵臓への圧迫を緩和させ,後腹膜へ拡大した出血を洗浄除去,胃空腸吻合術を追加して手術を終了した.術後経過は良好で,術後15日目に退院となった.保存的治療に抵抗性で治療の長期化が懸念された場合は,早期の外科的介入を考慮するべきと考えられた.