2021 年 82 巻 6 号 p. 1194-1199
症例は58歳の男性で,腹部腫瘤を主訴に来院した.造影CTで膵鉤部・十二指腸尾側に径12cmの充実性腫瘤を認め,上腸間膜静脈(以下,SMVと略記)は第2空腸静脈(以下,J2Vと略記)合流部の末梢側が腫瘤に巻き込まれ閉塞していた.開腹所見では,腫瘤は腸間膜内を大きく占め,膵鉤部や十二指腸水平脚に癒着していた.膵鉤部・十二指腸部分切除,右半結腸切除,第1空腸静脈(以下,J1Vと略記)合流部より末梢側のSMV切除により,遺残なく切除できた.右半結腸切除により結腸間膜経由の小腸静脈還流が途絶えるので,J2Vを再建し,小腸の静脈還流はJ1VとJ2Vを確保した.病理組織学検査でデスモイドと診断した.切除断端は陰性だった.解剖学的に極めて複雑な部位に発生し周囲臓器浸潤を伴った巨大デスモイドであったが,過不足のない周囲臓器の合併切除と腸間膜静脈再建により腫瘍を遺残なく摘出でき,術後5年10カ月無再発である.