2021 年 82 巻 8 号 p. 1474-1479
70歳,女性.右乳房に皮膚潰瘍を伴う12cmの腫瘤があり,生検で浸潤性乳管癌,ER/PgR-,HER2-であり右乳癌T4bN3cM0 Stage IIIC,トリプルネガティブタイプと診断した.白血球数98,600/μl(好中球93.5%),血清G-CSF値1,200pg/ml(基準値39.0pg/ml以下)と高値であり,生検検体のG-CSF免疫染色陽性であったためG-CSF産生乳癌と診断した.術前化学療法としてAC療法4回,docetaxel療法1回を施行したが局所進行を認めたため,手術(右乳房全切除術,腋窩リンパ節郭清)を行った.術後速やかに白血球数は正常値化し血清G-CSFが低下したものの,術後わずか2週間で多数の皮下腫瘤と縦隔リンパ節腫大が生じ,白血球数も再上昇したため再発と診断した.手術検体の腫瘍浸潤免疫細胞がPD-L1陽性であったためatezolizumab+nab-paclitaxel療法(以下,AP療法)を行ったところ奏効が得られ8コースを施行した.G-CSF産生腫瘍は様々な癌種で報告されているが,乳癌での報告例は稀である.多くは治療抵抗性であり予後不良とされているが,本症例ではAP療法による奏効が得られた.