2021 年 82 巻 8 号 p. 1480-1485
先天性胸筋欠損症は,乳癌に併存することは非常に珍しく,今回両側多発乳癌を併発した1例を経験したので報告する.症例は49歳の女性で,8歳時に脳腫瘍の手術歴があった.検診異常で両側乳癌が疑われ,当科受診となった.左CD領域に2.2cm,C領域に1.7cmの腫瘤,右D領域に1.4cmとC領域に0.9cmの腫瘤を認め,病理学的検査で浸潤性乳管癌と診断された.治療は,両側乳腺全切除術と腋窩リンパ節郭清を施行した.左側では大胸筋と小胸筋が欠損し,乳腺背側直下に肋骨を認めたが,胸筋神経と伴走血管は認めなかった.術後病理結果は両側とも浸潤性乳管癌であった.脳腫瘍の既往と両側多発乳癌から,Li-Fraumeni症候群などが否定できず,遺伝学的検査を行った上での放射線治療を計画していたが,右上腕骨骨折のため放射線治療は施行しなかった.胸筋欠損症の乳癌手術では普段見慣れない視野展開となり,温存すべき血管や神経には一際注意が必要である.