2021 年 82 巻 8 号 p. 1583-1587
症例は57歳,女性.10数年来の腹壁瘢痕ヘルニアにて元々腹部は30×30cmに膨隆し,非還納性であった.突然の腹痛,嘔吐にて発症し,発症15時間で当院を受診.腹部は膨隆の程度は変わらぬものの,著明な腹膜刺激症状を認め,CTにて巨大ヘルニア嚢内での,絞扼性腸閉塞を示唆する画像所見と小腸の一部造影不良域を認め,緊急手術を施行した.ヘルニア嚢内で癒着した小腸を内ヘルニア門とし,そこに嵌頓した腸管がさらに捻転し壊死に至っていた.壊死腸管を切除,吻合した.ヘルニア門が10×8cmと大きく,単純縫合閉鎖は困難にてcomponent separation repairにより修復した.術後創部感染を発症したが,皮下膿瘍の穿刺ドレナージにて改善した.術後15カ月で,感染の再燃やヘルニアの再発を認めていない.術野の汚染を伴う場合のヘルニア修復術の術式選択については,特にmesh使用の適否など,未だcontroversialである.今回われわれはmeshを使用しない本術式を選択し,術後創部感染の影響を最小限に止め治癒を得られた.