2022 年 83 巻 1 号 p. 92-97
症例は58歳,男性.Hodgkinリンパ腫再発に対し,nivolumabにて治療中であった.化学療法開始5日目から嘔吐があり,翌日から強い腹痛を認め救急搬送となった.入院後も右下腹部に強い圧痛を認め増悪傾向であり,血液検査でWBC・CRPの上昇,造影CTで回腸に部分的な造影不良域を認めSMA本幹の血流は保たれ,その他の部位に絞扼や閉塞の所見はなく,NOMIの疑いにて緊急手術を施行した.手術所見では,遠位回腸に色調不良,虚血,壊死の所見を認め,やはりNOMIを疑う所見であった.ICG蛍光法にて血流評価を行い切除範囲を決定し,小腸部分切除吻合術を行った.術後は麻痺性イレウスとなったが,保存的加療にて改善し退院となった.近年,化学療法中にNOMIを発症した報告が散見されるが,nivolumab投与中の報告は認めない.今回われわれは,Hodgkinリンパ腫再発に対しnivolumabにて治療中にNOMIを発症し,外科的治療により救命しえた1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.