2022 年 83 巻 10 号 p. 1740-1746
症例は52歳,男性.貧血の精査目的に当院を受診し,上部消化管内視鏡検査で前庭部に複数の早期胃癌病変を指摘された.内視鏡的粘膜下層剥離術を施行されたが,病理組織学所見でいずれもEpstein-Barr virus encoded RNA (EBER)陽性であり,Epstein-Barr virus (EBV)関連胃癌の診断となった.そのうちの1病変で深達度SM2,高度静脈侵襲の所見を認めたため,外科的追加切除の方針となった.本症例に対して腹腔鏡下胃全摘術を施行し,手術切除標本で新たにEBV陽性早期胃癌を認め,結果的に計8個の多発病変であった.さらに,癌部以外にも,前癌病変を示唆するEBER陽性を呈する異型腺管の集簇巣を認めた.今回われわれは,同時性に8病変を伴ったEBV関連多発早期胃癌の1切除例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.多発胃癌症例を診療する際にはEBV関連胃癌の可能性を念頭に置き,診断がなされた場合,同時性/異時性発癌のポテンシャル,患者背景も考慮した治療方針の決定が重要と考えられた.