日本臨床外科学会雑誌
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症例
化膿性脊椎椎間板炎と緑膿菌々血症を呈した下行結腸癌の1例
柴田 信博中嶋 啓雄坂井 昇道西澤 恭子
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2022 年 83 巻 5 号 p. 903-907

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抄録

症例は,背部痛で他院受診中であった72歳の男性.背部痛が増強してきたため,当院へ緊急紹介受診した.救急外来での造影CTで,第4・5腰椎間腔の化膿性脊椎椎間板炎(vertebral pyogenic spondylodiscitis:以下VPSD),全周性の下行結腸癌,慢性解離性腹部大動脈瘤(Stanford B型)と診断された.また,来院時の動脈血培養検査で緑膿菌が検出され,大腸癌からの血行感染によるVPSDと診断した.絶食とベッド上での安静,疼痛制御,降圧剤による血圧適正制御,抗菌薬経静脈投与を行いながら,入院20病日に完全血管内手術,26病日に経肛門的イレウス管挿入による緊急減圧を行い,三期分割手術を行った.大腸癌に対しては治癒切除が行われ,VPSDは後遺症を残すことなく抗菌薬治療で治癒した.患者は治療後1年経過した現在,無再発生存中で通常の社会生活を送っている.VPSDと緑膿菌々血症を呈した大腸癌のまれな1例を報告し,感染機序について文献的考察を行った.

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