2022 年 83 巻 7 号 p. 1216-1220
目的:腹膜播種に対して腹膜切除と腹腔内温熱化学療法が有効な治療となる症例が存在するが,シスプラチン使用後の腎不全はしばしば問題になってきた.
方法:シスプラチンを用いた腹腔内化学療法を行った63例について,患者背景,術中・術後の17因子について,術後腎障害との関連を検討した.チオ硫酸ナトリウムによる腎保護は行わなかった.
結果:Grade2以上の腎機能障害の症例は6例,grade3以上は3例に見られた.Grade2以上の危険因子は,手術時間,コロイド輸液量,術中尿量で,独立した因子は同定できなかった.Grade 3以上の危険因子は,コロイド輸液量であった.
結語:シスプラチン使用後の腎不全は約10%の症例に見られた.コロイド輸液を控えること,術中尿量を確保することである程度予防できる可能性があるが,より安全に行うためには,さらに腎保護を考慮すべきであると考えられた.