2022 年 83 巻 7 号 p. 1250-1255
完全内臓逆位は胎生期の発生異常によって生じる解剖学的異常である.全臓器が正常に対して鏡面的に位置するため,肺癌手術を行う際には分離肺換気の確立と解剖構造の把握が重要である.今回,完全内臓逆位に併存した肺癌の手術例を経験した.症例は68歳,女性.胸部異常影を指摘され当科受診となった.胸部X線,CTで完全内臓逆位と左上葉に肺癌を疑う結節影を認めた.3D-CTで肺動静脈分岐と気管支構造を確認した.短い左主気管支に気管支ルーメンや気管支ブロッカーを置かないよう,右用ダブルルーメン気管支内チューブ(DLT)を用い左上葉切除術を行った.3D-CTの通り,肺門で上幹肺動脈が分岐し,葉間部でA2bが分岐する,通常の右肺動脈の分岐の鏡面的構造であった.
分離肺換気の確立,3D-CTで気管支,血管構造の把握が重要であるが,肺虚脱に伴う立体構造の変化にも注意が必要と思われた.