2022 年 83 巻 7 号 p. 1352-1357
症例は75歳,男性.二度目の冠動脈バイパス術(coronary artery bypass graft;以下,CABG)で右胃大網動脈(right gastroepiploic artery;以下,RGEA)が用いられた.70歳時に膵管内乳頭粘液性腺癌(IPMC)で膵体尾部切除術を施行した.今回,繰り返す胆管炎に対する精査で遠位胆管癌と診断された.膵頭十二指腸切除術の予定としたが,冠動脈造影検査でグラフトの開存が確認され,グラフトの切除再建の可能性も視野に手術を行い,RGEAを損傷せぬよう温存しえた.膵体尾部切除後のため結果的に膵全摘となった.病理組織学的所見は浸潤性膵管癌,pT3N1b,stage IIBでR0切除が可能であった.RGEAグラフトによるCABG後の上腹部手術では,RGEAの損傷により心合併症を引き起こす可能性があり,慎重な手技を要する.さらに,グラフト損傷や郭清上グラフトを合併切除する必要のある場合,グラフト再建を要する可能性が生じる.術中のグラフトに対する愛護的な操作に加え,癒着や血行再建に備えた十分な準備·対策が肝要であると考えられる.