日本臨床外科学会雑誌
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症例
単孔式腹腔鏡手術で損傷回避した腹部大動脈瘤併存下行結腸癌の1例
武内 寛田代 浄杉谷 純伊藤 良太森 和彦川崎 誠治
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2022 年 83 巻 9 号 p. 1626-1633

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抄録

症例は83歳,男性.便潜血陽性のため下部消化管内視鏡検査を施行し,下行結腸癌T1bN0M0 cStage Iと診断した.他院で腹部大動脈瘤(abdominal aortic aneurysm,以下AAA)に対する腹部大動脈ステントグラフト内挿術(endovascular aortic repair,以下EVAR)の既往あり.腹部骨盤造影CTでは,腹腔内中央に位置する50mm×45mm大のAAAを認め,エンドリークを認めなかった.多孔式腹腔鏡手術で生じうる右側ポートからの鉗子接触によるAAA破裂やステントグラフトのずれ,AAAによる鉗子操作制限を考慮し,単孔式腹腔鏡手術を施行した.腹高の頂点となる臍部からアクセスすることでAAAを鉗子で圧排すること無く安全に手術を行うことが出来た.今後,AAAと大腸癌を有する腹腔鏡手術が増加すると予想されるが,単孔式腹腔鏡手術を選択することで上記リスクを回避することが可能であった.本術式の有用性に関して文献考察を交え報告する.

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