2023 年 84 巻 2 号 p. 273-280
肺内発生の胸腺腫は非常に稀であり,僅かな報告例があるのみである.肺内原発の胸腺腫は画像診断で他の肺腫瘍と鑑別することは困難であり,確定診断には外科的摘出による病理学的診断が有用である.今回われわれは,多発結節影の経過観察中に肺腺癌を発症,右上葉切除後に多発結節が胸腺腫と診断された1例を経験した.これに若干の考察を加え報告する.症例は71歳,女性.両側性多発肺結節に対し経過観察していた.20年前に1つを摘出生検し,良性結節と診断された.右上葉に増大傾向のある不整形陰影を認め,CTガイド下肺生検にて肺腺癌と診断した.胸腔鏡補助下右上葉切除術を施行,病理診断にて中分化型腺癌pT1bN0M0 Stage I A-2と診断した.右上葉内に2個の充実型結節があり,肺内胸腺腫(type A)と診断した.その形態的特徴は20年前の標本と一致,胸腺内に胸腺腫を疑う腫瘤影は認めず,肺原発と推察される多発胸腺腫と診断した.