2023 年 84 巻 5 号 p. 831-835
腎移植後の鼠径ヘルニア根治術では,腹膜前腔を走行し膀胱と吻合している移植腎尿管の損傷リスクを避けるために腹膜前腔の剥離操作が加わらない方法が有用であるとされている.今回,われわれは生体腎移植後2年でグラフト側に鼠径ヘルニアを生じLichtenstein法にて修復を行った1例を経験した.症例は63歳,男性.2年前に末期腎不全にて生体腎移植術を施行.定期受診にて右鼠径ヘルニアを認め,Lichtenstein法にてポリプロピレンメッシュを挿入し修復した.術後4日目に経過良好にて退院.以後,外来フォロー中であるが腎機能悪化はなく,ヘルニアの再発もなく経過している.腎移植患者の4.9%にグラフト側の鼠径ヘルニアを発症したとの報告もあり,腎移植後の鼠径ヘルニア手術に関する報告は直近12年間で29例あり,これらの文献的考察を加え報告する.