2024 年 85 巻 11 号 p. 1574-1579
症例は60歳,男性.11年前から前医で2個の膵囊胞性病変を経過観察されていた.腫瘍径が増大傾向であり,CTで造影効果を伴う充実成分や周囲組織への浸潤など,悪性を示唆する所見が否定できなかったため,手術目的に当院を紹介受診した.膵漿液性囊胞腫瘍(serous cystic neoplasm;以下,SCN)と診断したが,腫瘍径が大きいこと,増大傾向であることなどを理由に手術適応とし,腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行した.病理組織学的に2個の腫瘍はmicrocystic typeのSCNと診断したが,2個の腫瘍以外にも背景膵には小さなSCNが散在していた.多発・散在性のSCNはvon Hippel-Lindau病(以下,VHL病)に合併しやすいことが報告されており,本症例では有意な家族歴はなかったものの,既往歴に12年前の脳血管芽腫手術歴があった.本症例は2個の腫瘍と微小病変が多発した稀なSCNとしての診断を契機にVHL病が疑われた症例であり,文献的な考察を加えて報告する.