2024 年 85 巻 2 号 p. 260-265
症例は38歳,女性.5日前からの下腹部痛を主訴に近医を受診した.右下腹部に5cm大の腫瘤を触知し,同部位に軽度の圧痛を認めた.血液検査では軽度の炎症反応の上昇があり,腹部造影CTでは虫垂の腫大と,膿瘍を疑う内部均一な低吸収領域を認めた.穿孔性虫垂炎が疑われ抗菌薬投与が開始されたが,虫垂粘液腫なども鑑別に挙げられた.当院に転院後,切除による診断・治療目的で手術を施行した.術中所見では虫垂先端部は大網に被覆されていたが膿瘍形成は認めず,虫垂根部は腫大のみで,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.術後は合併症なく経過し,術後5日目に軽快退院となった.切除標本では虫垂粘膜と周囲の脂肪組織に淡黄色調領域を認め,病理組織学的に泡沫状組織球の浸潤を多数認め,黄色肉芽腫性虫垂炎と診断された.本症例は稀な疾患であり,悪性腫瘍が術前疑われ拡大手術を施行される例がほとんどであり,文献的考察を加えて報告する.