2025 年 86 巻 10 号 p. 1306-1310
症例は70歳,男性.咳嗽と喀痰を主訴に近医を受診した.近医で撮影したCTで前縦隔腫瘍を指摘され,当施設に紹介となった.胸腺上皮性腫瘍が疑われ,周辺に縦隔リンパ節の腫大も認めた.剣状突起下,両側胸腔鏡,頸部アプローチで胸腺摘出術を施行した.病理診断は胸腺異型カルチノイドで,縦隔リンパ節転移と被膜を越え縦隔脂肪織内への浸潤を伴っていた.術後放射線治療を施行したが,術後3年で肺転移と胸膜播種を認めた.その後,がん遺伝子パネル検査でMEN1遺伝子変異を認めた.エベロリムスを使用したが奏効せず,現在も全身化学療法を行っている.胸腺カルチノイドは比較的稀ではあるが,予後不良な疾患である.MEN1を20~25%に合併するとされており,MEN1に関連する疾患を発見した際にはMEN1を念頭に置き,胸腺カルチノイドの早期発見が重要である.