2025 年 86 巻 12 号 p. 1601-1605
症例は70歳,男性.6年前に当院で後腹膜膿瘍に対する保存的治療歴がある.左鼠径ヘルニアの加療目的で受診した際に,右腰背部皮下からの排膿を認めた.造影CTで右腰背部の皮下まで拡がる右後腹膜膿瘍と診断した.虫垂の先端が不明瞭で膿瘍腔と接していたことから虫垂炎に起因する膿瘍形成の可能性が高いと考えたが,腹痛や発熱等の症状はなく,炎症反応の上昇も軽度であったため,皮下膿瘍を切開排膿し抗菌薬投与を行い排膿は改善した.虫垂炎の治療に先行して腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術を行い,約3カ月後に待機的に腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.術中所見では,盲腸背側外側に後腹膜に固着する萎縮した虫垂を認めた.術後3年を経過したが後腹膜膿瘍の再燃は認めていない.虫垂炎に起因する後腹膜膿瘍症例は散見されるが,皮下膿瘍の体外への自然穿破を契機に診断されたとする本邦報告例はない.希少な症例と考えられるので,文献的考察を加え報告する.