2025 年 86 巻 5 号 p. 652-658
症例は79歳の男性で,腹痛を主訴に近医を受診し,腹部CTで膵頭部に20×13mm,膵尾部に38×22mmの腫瘤と,左副腎に径9mmの結節を認め,副腎転移を伴う膵腺房細胞癌と診断された.当院に紹介となり,gemcitabine・nab-paclitaxel併用療法を導入したが有害事象のため継続困難で,続いてS-1に変更したが薬疹のため中止した.化学療法後の評価では,膵頭部病変は部分奏効,膵尾部病変は安定だった.超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診で左副腎病変を再評価したところ副腎転移が否定されたため,根治切除可能と判断し,膵全摘術を施行した.病理組織診断は膵2病変とも腺房細胞癌だった.
膵腺房細胞癌は稀な腫瘍で,特に多発例の報告は1例のみである.本症例では,膵頭部と膵体部の病変で化学療法後の画像変化や病理学的所見が異なっており,多中心性発癌により生物学的特性の異なる腫瘍が生じたものと考えられた.