日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
第86回学術集会会長講演
地域に外科を,そして世界へ
佐田 尚宏
著者情報
ジャーナル フリー

2025 年 86 巻 7 号 p. 839-846

詳細
抄録

近年,外科医の数は減少傾向にある.2016年時点の外科医師数を維持するためには,年間907人の養成が必要であると推計されている.しかし,2018年に開始された新外科専門医制度における専門医専攻医の年間平均数(2018~2024年)は837人にとどまり,着実に外科医が減少していることが外科診療の持続可能性に影響を及ぼしている.

従来,外科医はユーティリティプレイヤーとしての役割を担ってきた.手術にとどまらず,検査,化学療法,緩和医療など,診療科を超えた広範な業務に従事し,地域医療においても重要な役割を果たしてきた.しかしながら,この枠組みは近年機能不全を起こしつつある.2013年以降に議論が開始された地域医療構想の枠組みを通じ,地域の外科診療をいかに維持し,質の高い外科医療を提供し続けるかについて,抜本的な対策を講じる必要がある.この課題への適切な対応がなければ,外科診療の持続可能性は危機に瀕する可能性が高い.

外科医の職業的魅力は,そのキャリアパスの多様性にある.日本の外科手術の成績は世界的にもトップレベルであり,外科医は専門領域に特化したスペシャリスト,地域医療を支えるジェネラリスト,さらには国際的な舞台で活躍する医師など,多様なキャリアを選択することができる.この幅広い選択肢が外科医療の発展を支える重要な要因となる.したがって,若手医師や医学生が外科に夢を持ち,若手外科医が仕事にやり甲斐を感じ,すべての外科医が充実した職業人生を歩める環境を整備することが必要である.このような環境の構築こそが,われわれの世代に求められる責務であり,外科医療の持続可能性を確保するための重要な課題となる.

著者関連情報
© 2025 日本臨床外科学会
次の記事
feedback
Top