抄録
嚥下リハビリテーション(以下リハ)実施中に嚥下障害が悪化し,その原因として低ナトリウム血症が考えられた症例を経験したので報告する.症例は73 歳の男性で,肺炎のために入院となり,入院3 日目に嚥下評価・リハ依頼で当科へ紹介となった.ビデオ嚥下造影検査(VF)で嚥下障害は軽度であることを確認して全粥とペースト食を介助で開始したが,その後むせや発熱があり,経口摂取を一旦中止とした.VF を再検したところ誤嚥の悪化が認められたものの,頭部MRI では新たな脳病変は認めなかった.胃瘻による栄養管理となり自宅退院した.血清Na 値は入院時134 mEq/L から2 回目のVF 前に118 mEq/L まで低下し,胃瘻造設後に改善して,退院時は144 mEq/L と正常になっていた.外来でVF を実施し嚥下機能の回復を確認した.本症例は嚥下機能の悪化と回復が,低Na 血症の進行と改善に同期しており,低Na 血症以外には嚥下機能悪化の原因が見当たらなかった.嚥下リハ実施にもかかわらず悪化する嚥下障害例では,低Na 血症による悪化の可能性も念頭に置く必要があると思われた.