全日本鍼灸学会雑誌
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教育講演
湯液 (漢方) と鍼灸の併用療法の意義
磯部 秀之
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2010 年 60 巻 2 号 p. 134-147

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抄録
 湯液 (漢方) と鍼灸は昔から 「車の両輪」 ともたとえられています。 ともに、 人間本来の治癒力を引き出すことを主眼とし、 病態を 「心身の歪」 として捉え、 その歪を是正していく方向で治療を行います。 自覚症状を尊重し、 愁訴をとることに重点を置いている点、 個別医療が基本である点など、 多くの共通点があります。 そうした両者の共通点、 治療の方向性をうまく活用することにより、 その併用療法は、 各々単独で治療を行った時よりも愁訴の軽減やQOLの向上に寄与することが可能です。 しかも、 漢方と鍼灸はお互いの治療効果を高め合いますので、 単なる相加ではなく、 相乗効果が期待出来るのです。
 一方、 漢方は服薬が基本であり、 体の内側からの治療になります。 鍼灸は経穴をはじめとする体表からの刺激が基本であり、 体の外側からの治療になります。 そうした違いからも、 漢方と鍼灸には、 各々、 得意とする分野、 より適した病態があるのも事実です。 そのため、 各々の特徴を生かした、 相補的な併用療法も可能となります。
 埼玉医大の東洋医学外来では併用療法を数多く行っており、 その比率は、 鍼灸側からは4人に1人、 漢方側からは6割にも達しています。 その併用が、 特に、 患者さんのQOLの向上に役立つことは、 しばしば経験されます。 しかも、 病態によっては併用してこそ効果の上がる症例、 ぜひとも併用が必要と思われる症例もまれではありません。
 この講演では、 併用療法の有効例の中から、 併用による効果を説明し易いものを提示し、 考察を加えました。 慢性蕁麻疹、 線維筋痛症、 腰痛 (変形性腰椎症)、 緊張型頭痛及び耳管開放症の症例を取り上げましたが、 漢方に鍼灸を併用、 あるいは、 鍼灸に漢方を併用することで、 治癒までの期間の短縮、 単独の治療では取り切れなかった愁訴の改善、 随伴する症状の軽減等、 QOLのさらなる向上が得られました。
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© 2010 社団法人 全日本鍼灸学会
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