全日本鍼灸学会雑誌
Online ISSN : 1882-661X
Print ISSN : 0285-9955
ISSN-L : 0285-9955
60 巻 , 2 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
巻頭言
解説
会長講演
  • 山口 智
    原稿種別: 会長講演
    2010 年 60 巻 2 号 p. 121-133
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
     鍼灸治療は長い歴史を有する東洋古来の伝統医療であり、 数多くの疾患や症状に効果が期待できる治療法である。 近年、 欧米各国からも鍼灸医療に関する基礎・臨床研究が数多く報告されており、 統合医療としてその確立が期待されている。 本学における東洋医学部門の設立は1984年であり、 約25年間にわたり医科大学において診療や研究・教育に従事してきた。
     診療においては、 診療各科との連携を深め、 診療依頼患者も過半数を超え、 入院患者も取り扱っている。 鍼灸治療の対象となった患者群は難治性の疼痛や麻痺、 一連の不定愁訴などであり、 鍼灸治療の有効率は高く、 医科大学病院において鍼灸治療の果たす役割の大きいことも示唆された。
     研究においては、 鍼灸医療に関する基礎・臨床研究を推進し、 一次性頭痛や脳血管障害、 顔面神経麻痺、 関節リウマチ、 Sjögren症候群、 非特異的腰痛などに対する鍼灸治療の効果やその作用機序について検討した。 また、 自律神経や免疫を指標とした検討において伝統医療の特質を科学的に解明した。
     今後、 各診療科の専門医と連携を深め、 鍼灸治療の有効性や有用性を明らかにし、 EBMに基づいた研究を推進することが必要不可欠である。 伝統医療である鍼灸医療を医科大学の中に明確に位置づけるとともに、 統合医療として確立させ、 日本の鍼灸医療を世界に発信したいと念願している。
教育講演
  • 磯部 秀之
    原稿種別: 教育講演
    2010 年 60 巻 2 号 p. 134-147
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
     湯液 (漢方) と鍼灸は昔から 「車の両輪」 ともたとえられています。 ともに、 人間本来の治癒力を引き出すことを主眼とし、 病態を 「心身の歪」 として捉え、 その歪を是正していく方向で治療を行います。 自覚症状を尊重し、 愁訴をとることに重点を置いている点、 個別医療が基本である点など、 多くの共通点があります。 そうした両者の共通点、 治療の方向性をうまく活用することにより、 その併用療法は、 各々単独で治療を行った時よりも愁訴の軽減やQOLの向上に寄与することが可能です。 しかも、 漢方と鍼灸はお互いの治療効果を高め合いますので、 単なる相加ではなく、 相乗効果が期待出来るのです。
     一方、 漢方は服薬が基本であり、 体の内側からの治療になります。 鍼灸は経穴をはじめとする体表からの刺激が基本であり、 体の外側からの治療になります。 そうした違いからも、 漢方と鍼灸には、 各々、 得意とする分野、 より適した病態があるのも事実です。 そのため、 各々の特徴を生かした、 相補的な併用療法も可能となります。
     埼玉医大の東洋医学外来では併用療法を数多く行っており、 その比率は、 鍼灸側からは4人に1人、 漢方側からは6割にも達しています。 その併用が、 特に、 患者さんのQOLの向上に役立つことは、 しばしば経験されます。 しかも、 病態によっては併用してこそ効果の上がる症例、 ぜひとも併用が必要と思われる症例もまれではありません。
     この講演では、 併用療法の有効例の中から、 併用による効果を説明し易いものを提示し、 考察を加えました。 慢性蕁麻疹、 線維筋痛症、 腰痛 (変形性腰椎症)、 緊張型頭痛及び耳管開放症の症例を取り上げましたが、 漢方に鍼灸を併用、 あるいは、 鍼灸に漢方を併用することで、 治癒までの期間の短縮、 単独の治療では取り切れなかった愁訴の改善、 随伴する症状の軽減等、 QOLのさらなる向上が得られました。
シンポジウム
原著
  • 鍋田 智之, 小林 理奈, 小島 賢久, 山下 仁
    原稿種別: 原著
    2010 年 60 巻 2 号 p. 182-189
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    【目的】質の高い鍼灸の臨床研究デザインについて啓発を図る目的で、 18施設の教員28名を対象に、 腰痛の被験者評価者マスク・sham鍼対照RCTの模擬実践を行った。
    【方法】対象者を評価者、 治療者、 被験者に分けてそれぞれの役割を担当しながら研究デザインの理解を深めさせた。 この試みの教育効果を評価するために、 模擬RCT実践前後にEvidence-Based Medicine (EBM) の必要性、 RCT用語の理解度についてVisual Analogue Scale (VAS) を用いた質問調査を行った。
    【結果】RCTの理解度はVAS値が58.0±27.2から75.7±25.7に上昇し、 また、 RCT用語の理解度も上昇した。 模擬終了後に19名が今後RCTの実施および教育への導入を検討すると回答した。
    【結論】模擬RCTはRCTの理解度を高め鍼灸教育への導入を促進させる効率のよい実践法であることが示唆された。
  • 有働 幸紘, 久米 健, 竹田 清
    原稿種別: 原著
    2010 年 60 巻 2 号 p. 190-196
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    【目的】PainVision®は痛みの強さを、 痛み対応電流値 (痛みと同等の電流量) と最小感知電流値 (患者が感じる最小の電流量) から痛み度として算出する装置である。 慢性疼痛患者に対する鍼治療の効果判定にPainVision®を用いVisual analogue scale (VAS) との比較検討を行った。
    【方法】継続的に鍼治療を受けている慢性疼痛患者23名を対象としてPainVision®およびVASによる痛みの評価を鍼治療前後に行った。
    【結果】治療後にVAS値、 痛み度、 痛み対応電流値は有意に低下した。 最小感知電流値は上昇傾向であったが有意差はなかった。 VAS値と痛み度の治療後の変化は87%において一致していた。
    【考察と結語】PainVision®はVASと同様に痛みの強さの評価が可能であり、 慢性疼痛に対する鍼治療の効果判定にPainVision®は有用であると考えられた。
  • 坂本 裕和, 藤井 亮輔, 光岡 裕一, 坂井 友実, 秋田 恵一
    原稿種別: 原著
    2010 年 60 巻 2 号 p. 197-208
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    【目的】骨盤内臓の疾患に対する重要な治療点としての八リョウ穴と骨盤神経叢の構成および臓側枝との位置関係を検討した。
    【方法】東京医科歯科大学大学院臨床解剖学分野所蔵の実習体5体を使用し、 実体顕微鏡下で、 骨盤神経叢の構成および臓側枝の分岐形態と八リョウ穴との位置関係を精査した。
    【結果】1. 骨盤神経叢を構成する交感神経成分の下腹神経は第2および第3腰内臓神経が恒常的に参加する上下腹神経叢から起こり、 骨盤神経叢の後上角に入る。
    副交感神経成分の骨盤内臓神経は第2~第4仙骨神経前枝から起始し、 骨盤神経叢の後下角に入る。 陰部神経および肛門挙筋神経とは共通幹を形成する傾向が強い。
    2. 骨盤神経叢から起こり骨盤内臓に分布する臓側枝は均一に起始するのではなく、 I~IV群に分かれる傾向が強い。 特に、 III群は排尿・性機能に深い関わりを持つ。
    【結論】1. 八リョウ穴への刺鍼では、 骨盤内臓神経が恒常的に起こる第3および第4仙骨神経前枝に直接刺激が可能である中リョウ (BL33) および下リョウ (BL34) が骨盤内臓の機能に影響を及ぼすことが示唆される。
    2. 八リョウ穴への深鍼では、 刺入鍼は直腸の側縁に達するため正中方向への刺鍼には注意を要する。
報告
  • 櫻庭 陽, 向井 雄高, 桝田 文八
    原稿種別: 報告
    2010 年 60 巻 2 号 p. 209-215
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    【目的】今後の鍼治療普及の可能性を検討するために、 三重県内の透析施設を対象にアンケート調査を行い、 透析患者の愁訴状況や透析医療における鍼治療の現状とそれに関わる問題点を明らかにした。
    【方法】三重県内の全透析施設 (2007年2月現在、 50施設) に対して、 郵送により透析患者の身体状況と鍼治療に関するアンケートを実施した。
    【結果】三重県内で鍼治療を導入している透析施設は6.0%であったが、 患者に鍼治療を薦めないと回答した施設は無く、 導入に対して興味がないという施設も少なかった(15.4%)。 多くの患者が訴え、 施設でも対応に困っている症状は先行研究でも鍼治療の効果が示されている 「かゆみ」 や 「痛み」 であった。 普及における問題は 「安全性」 という回答が多かった。
    【考察】スタッフが対応に困っている症状である 「かゆみ」 や 「痛み」 に対する鍼治療の効果は報告されているが、 鍼治療を行っている三重県透析施設はわずかだった。 しかし、 鍼治療を薦めない施設はなく興味も持っていたことから、 鍼治療導入の可能性は低くはないと思われる。 普及に向けては 「安全性」 やインターフェイスの不足という問題点を解決して、 情報ネットワークを構築する必要がある。
  • 草川 継夫, 坂井 友実, 大越 教夫
    原稿種別: 報告
    2010 年 60 巻 2 号 p. 216-224
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    【はじめに】パーキンソン病患者に対する鍼治療は、 運動症状をはじめとして、 自律神経症状、 精神症状および随伴症状を対象に行われている。 今回、 すくみ足を主症状とするパーキンソン病患者を治療する機会を得たので報告する。
    【症例】58歳、 男性 主訴:すくみ足と下肢のだるさ。 現病歴:200X-3年2月歩行障害を自覚。 200X-2年4月薬物治療を開始。 その後すくみ足は緩やかに進行。 200X年5月鍼治療を開始。 現症:運動症状では振戦、 筋強剛は軽度で、 すくみ足が主症状である。 自律神経症状等はなく、 随伴症状として下肢のだるさを自覚。 ADLは概ね自立できているが姿勢反射障害が認められることから、 ヤール分類では3度。 治療方法:合谷-曲池(4診目まで)、 足三里-三陰交(5診目以降変更)、 殷門-承筋(28診目以降追加)に低周波鍼通電(1~2Hz、 15分)および腰下肢の要穴に置鍼。 併用薬物:レボドパ/カルビドパ合剤、 塩酸トリヘキシフェニジル、 アマンタジン塩酸塩。 評価方法:すくみ足については施術前後で10m歩行、 方向転換のタイム計測を、 下肢のだるさはVASにより行った。
    【結果】すくみ足を評価した10m歩行と方向転換のタイムは10ヶ月間で26回計測したが、 直後効果、 累積効果ともに明確な改善は認められなかった。 下肢のだるさを評価したVASは6ヶ月間で21回測定し、 施術後直後効果 (平均17mmの改善) が認められ、 1~2日の持続効果も認められた。
    【考察】すくみ足に関する先行症例では、 上肢への低周波鍼通電により改善したことが報告されており、 今回のも当初同一の方法を試みたが、 改善効果を得るには至らなかった。 結果が相違した理由は明確ではない。 その後下肢への鍼通電に変更したが改善は認められなかった。 ただし下肢のだるさについては直後効果や持続効果が認められ、 鍼治療後に 「気分がすっきりする」 等の効果も認められた。
    【結論】本症例における鍼治療は、 下肢のだるさや気分がよくなるなどの自覚症状としての感覚症状や精神面の改善が得られたところに意義があると思われる。
  • 尾家 有耶, 田中 仁美, 坂口 俊二, 木村 研一, 近藤 哲哉, 川本 正純
    原稿種別: 報告
    2010 年 60 巻 2 号 p. 225-233
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    【目的】過去に受けた手術が原因で恐怖症となり、 腰下肢の痛み・しびれ感に対する鍼治療が難渋した症例に、 精神安静を目的とする鍼治療を加えたところ良好な経過が得られたので報告する。
    【症例】64歳、 女性。 主訴:右腰下肢の痛み・しびれ感。 愁訴:恐怖感、 肩こり、 右膝痛、 頻尿。 現病歴:X-14年の腰椎椎間板ヘルニアの術後痛がきっかけで、 仰臥位で度々、 体がフワフワと浮く感じでベッドを掴んでいないと怖いという感覚が起こるようになり、 近医より睡眠導入剤などが処方され、 加療するも症状変化なし。 X年4月、 転倒がきっかけで腰下肢症状が出現し、 近医にて腰椎椎間板ヘルニア (L5-S1) と診断。 入院加療するも症状変わらず、 11月本学附属鍼灸治療所を受診。 仰臥位での恐怖感を強く訴えるため、 同心療内科に紹介。 その結果、 DSM-IV 「300.29 特定の恐怖症」 の 「その他の型」 と診断。 既往歴:X-14年に腰椎椎間板ヘルニア (L4-L5) の手術。 鍼治療:ヘルニアの高位直側への低周波鍼通電療法を中心に行い、 鍼治療10回目より精神安定を目的に上星 (GV23) への置鍼、 内関 (PC6)・ダン中 (CV17)・気海 (CV6) への円皮鍼留置を加え、 鍼治療は週1回の間隔で計30回行った。 評価:鍼治療10回目より毎治療前後に指床間距離 (FFD)、 痛みのVisual Analogue Scale (VAS)、 気分のVAS、 日本版STAI (State-Trait Anxiety Inventory) を用いた。
    【結果および考察】14回目以降、 恐怖感が徐々に減少した。 また、 治療前後でFFDの改善、 痛みと気分のVAS値およびSTAIの状態不安得点の減少がみられ、 経時的にも腰下肢の症状と恐怖感が減少した。
    【結語】恐怖症を伴う腰下肢の痛み・しびれ感を主訴とする患者に対し、 患部に加えて精神安定を目的とする鍼治療を加えることで、 何れの症状も軽減した。
  • 中村 辰三, 川村 茂, 北小路 博司, 川村 敦子, 今井 賢治, 松熊 秀明
    原稿種別: 報告
    2010 年 60 巻 2 号 p. 234-243
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    【目的】われわれは女性が安全で、 簡便に肩凝りや痛みを軽減できる方法の開発を目的に、 ブラジャーストラップ (BST) に取り付け可能な押圧突起刺激用具を開発した。 肩凝り部への開発品BSTの評価を行い、 併せて磁気刺激の効果との比較検討をした。
    【方法】実験毎に6名の女性を対象として近赤外線分光法により肩部のオキシヘモグロビン (Oxy-Hb)、 トータルヘモグロビン (Total-Hb) を測定して各群の刺激前後で評価した。
    【結果】開発品BST群 (実験1・4) ではOxy-Hb、 Total-Hb値は増加し有意差 (p<0.05) が見られたが、 磁石BST群 (実験2・4) では刺激前後での差は見られなかった。
    【考察】開発品BSTにおいて有意差が認められたが、 磁石BSTでは有意差が認められなかった。 磁石は医療用具として血流促進が報告されているにもかかわらず、 今回の磁石 (厚さ0.5mm×径5mm、 800ガウス) の効果は認められなかった。 また、 開発品BSTは体格に関係なく効果があった。 磁気の影響については、 今回は薄く厚みの少ない磁石 (市販品) を使用したのでほとんど変化が無かった。 このことから磁気そのものの刺激が血流に影響するよりも皮膚面を押圧する突起の形状に関係があるのではないかと推測された。 押圧突起刺激によりヘモグロビン (Hb) 量の増加があり、 弱い刺激の貼付でも突起圧による陥凹や発赤の見られたモニターがいたことから、 ポリモーダル受容器の関与が考えられる。 圧刺激がポリモーダル受容器に作用し、 軸索反射を介して神経末端よりCGRPやサブスタンスPなどが放出され末梢血管が拡張し、 局所の血液量を増加させたともの考えられる。
    【結論】女性が安全で、 簡便に肩凝り感を軽減できるように、 BSTに取り付け可能な押圧突起を開発した。 開発品BSTの装着によりOxy-Hb、 Total-Hb値は刺激前後において有意差 (P<0.05) が見られ、 局所の血液量が増加した。 磁石BSTでは刺激前後でHb値の変動には有意差は無く、 増加は認められなかった。 体格の大小による刺激の差は無かった。
その他(資料)
編集者への手紙
国際部報告
  • 若山 育郎, 高澤 直美, 石崎 尚人, 津嘉山 洋, 篠原 昭二, 形井 秀一
    原稿種別: 国際部報告
    2010 年 60 巻 2 号 p. 255-260
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
     2009年11月3日~7日に開催された第7回WFAS世界鍼灸学術大会 (フランス・ストラスブール) においてWFASの標準化戦略に関わる2つの委員会が開催され、 全日本鍼灸学会 (JSAM) から国際部を中心に6名が参加した。 WFAS University Cooperation Working Committeeでは鍼灸国際教科書に関する提案、 WFAS Standard Working CommitteeではWHO (世界保険機構) やISO (国際標準化機構) で取り上げられていない項目を中心とした鍼灸の標準化に関する作業グループを作る提案がなされ、 実行されることになった。 しかしながら、 中国以外の参加国にそれらのプロジェクトの基本方針、 作業手順などの詳細が十分には説明されないまま進みつつあり、 これに対してJSAMとしては今後さらに積極的に対応していかねばならないと考えている。
feedback
Top