抄録
【目的】過去に受けた手術が原因で恐怖症となり、 腰下肢の痛み・しびれ感に対する鍼治療が難渋した症例に、 精神安静を目的とする鍼治療を加えたところ良好な経過が得られたので報告する。
【症例】64歳、 女性。 主訴:右腰下肢の痛み・しびれ感。 愁訴:恐怖感、 肩こり、 右膝痛、 頻尿。 現病歴:X-14年の腰椎椎間板ヘルニアの術後痛がきっかけで、 仰臥位で度々、 体がフワフワと浮く感じでベッドを掴んでいないと怖いという感覚が起こるようになり、 近医より睡眠導入剤などが処方され、 加療するも症状変化なし。 X年4月、 転倒がきっかけで腰下肢症状が出現し、 近医にて腰椎椎間板ヘルニア (L5-S1) と診断。 入院加療するも症状変わらず、 11月本学附属鍼灸治療所を受診。 仰臥位での恐怖感を強く訴えるため、 同心療内科に紹介。 その結果、 DSM-IV 「300.29 特定の恐怖症」 の 「その他の型」 と診断。 既往歴:X-14年に腰椎椎間板ヘルニア (L4-L5) の手術。 鍼治療:ヘルニアの高位直側への低周波鍼通電療法を中心に行い、 鍼治療10回目より精神安定を目的に上星 (GV23) への置鍼、 内関 (PC6)・ダン中 (CV17)・気海 (CV6) への円皮鍼留置を加え、 鍼治療は週1回の間隔で計30回行った。 評価:鍼治療10回目より毎治療前後に指床間距離 (FFD)、 痛みのVisual Analogue Scale (VAS)、 気分のVAS、 日本版STAI (State-Trait Anxiety Inventory) を用いた。
【結果および考察】14回目以降、 恐怖感が徐々に減少した。 また、 治療前後でFFDの改善、 痛みと気分のVAS値およびSTAIの状態不安得点の減少がみられ、 経時的にも腰下肢の症状と恐怖感が減少した。
【結語】恐怖症を伴う腰下肢の痛み・しびれ感を主訴とする患者に対し、 患部に加えて精神安定を目的とする鍼治療を加えることで、 何れの症状も軽減した。