抄録
1990 年にペインクリニックで開業し、 慢性疼痛の患者の対応に非常に難渋した。
その時に出会ったのが東洋医学 (鍼・漢方薬) である。 1992 年より田山文隆先生が主宰されていた東洋医学筑後研究会 (現・東洋医学氣血研究会) に入会し、 鍼治療を学び、 施行すると慢性疼痛には効果的であった。
1999 年よりがん患者さんが来院されるようになった。 その中で最後を自宅で迎えたいという切なるニーズがあることが判り、 7 月より在宅での看取り (在宅緩和ケア) を開始した。 2012 年 12 月までの 13.5 年間で 382 名の訪問診療を経験し、 在宅での看取りは 241 名 (63%) であった。 2012 年の内訳は 41 名の訪問診療を施行し、 在宅死 26 名 (63.4%)、 緩和ケア病棟死 8 名 (19.6%)、 一般病院死 7 名 (17%) であった。 訪問診療を行った患者さんのうち 10 名に鍼治療を施行した。 食欲不振・全身倦怠感等の症状緩和が目的で、 方法は円皮針貼布、 曲池 (LI 11) ・足三里 (ST 36) を選穴した。 そして、 41 名すべての患者さんに 「ハウトケア」 という精油を使用し経穴・経絡を刺激する手足のマッサージを施行した。 時間があれば家族の方にも同マッサージを行った。
「西洋医学は病気のみが対象となってきており、 東洋医学では病気ではなく病人を看ることが基本となっている」 という言葉を実感している。 病気ではなく病をもった人を看るということは、 緩和ケアの基本である全人的ケアにも結び付く。 東洋医学を学び実践することが自ずと在宅緩和ケアを進める大きな力になっている。
鍼治療を学んだことで、 慢性疾痛の患者さんからがん患者さんまでと治療対象が広がった。 そして患者さん達から難治性症状が和らいだとの感謝の言葉を頂けるようになった。 あらためて鍼の凄さを認識している。
今後も鍼灸に助けながら、 がん患者さんと同行していきたいと願う。