抄録
【目的】近年がん患者に対する鍼灸治療は世界的に広まっている。 しかし本邦では病院内で鍼灸が実施されている施設が乏しく、 緩和ケアに鍼灸を導入した際の実際の情報が乏しい。 今回、 病院の緩和ケアチームに鍼灸師が参加している当院の現状を調査した。
【対象と方法】対象は当院のがん患者で、 入院目的がBest supportive care であり、 2011 年4月8日から2017年11月13日までの期間に鍼灸治療が開始された患者。 対象患者を診療録により後ろ向きに調査した。
【結果】対象患者75人のうち、 Performance Status3、 4に該当する患者は72名 (96%) だった。 酸素療法を行っていたのは37名 (49%) だった。 鍼灸治療期間中に胸水または腹水を認めた患者は55名 (73%)、 浮腫を認めた患者は50名 (67%) だった。 鍼治療の際には感染や出血のリスクを避けるために接触鍼を使っており、 灸治療の際には火傷や感染のリスクを避けるために有痕灸は使用していなかった。 鍼灸に対して肯定的な意見があったのは59名 (79%) だった。 亡くなる日の2日以内まで鍼灸治療を希望していた患者は45名 (66%) だった。 有害事象は3例あったがすべて軽症で一過性のものであり、 重篤な有害事象はなかった。
【結論】がん終末期における当院の鍼灸治療では、 患者が有するリスクを考慮して治療を行い、 重篤な有害事象はなかった。 鍼灸治療を受けた患者からは肯定的な意見が多くみられ、 がん終末期の症状緩和に鍼灸が有用である可能性が示唆された。