全日本鍼灸学会雑誌
Online ISSN : 1882-661X
Print ISSN : 0285-9955
ISSN-L : 0285-9955
会頭講演
現代医療における鍼灸の役割
-医療機関各科での鍼灸治療-
坂井 友実
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 72 巻 4 号 p. 229-236

詳細
抄録

著者はこれまで東大医学部附属病院麻酔科ペインクリニックをはじめとして、 同大学の物療内科 (現、 アレルギー・リウマチ内科)、 老年病科や財務省印刷局東京病院東洋医学センター、 精神科・内科のクリニック、 統合医療施設等で鍼灸の臨床経験を積むことができた。 これらの医療分野での鍼灸臨床と研究の経験から、 現代医療の中に鍼灸を位置づけるには、 現代医学的視点から疾患や症状を捉え、 病態を把握し、 病態に基づいた治療を行い、 鍼灸の有効性、 有用性を科学的根拠に基づいて評価、 検討することが重要と考える。  鍼灸の特徴は①個々の患者に応じた治療が可能である、 ②診断がつかなくても治療ができる、 ③生体にとって有害となる副作用が少ない、 ④病変部近傍への組織選択的なアプローチが可能である、 ⑤非薬物療法のため、 現代医学的な治療 (薬物療法や心理療法など) との併用が可能であるなどがあげられる。  これらの特徴を持つ鍼灸治療は、 現代医療の中で医療手段の一つとして有用となり得る。 さらに、 鍼灸師に求められるのは医師をはじめとした医療従事者と共通の認識をもって連携し、 信頼される力量をもつことと考える。

著者関連情報
© 公益社団法人 全日本鍼灸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top