【背景】近年、 温熱刺激に関与するTRPチャネルの存在が明らかとなり、 灸様刺激では脳機能や筋血流、 間接灸 (台座灸) では自律神経応答に関する報告がなされている。 また、 それと並行して、 温熱刺激の分布様式に関する基礎的検討も進んでいるものの、 感覚受容やそれに伴う生理的メカニズムの詳細は依然として不明である。 【目的】セルフケアへの応用を視野に入れた台座灸の効果を検討する目的で、 灸を取り除くタイミングの違いが温熱感覚および皮膚表面温(以下、 皮膚温)に与える影響を検討した。 【方法】冷えに起因する基礎疾患のない成人女性38名を対象とした。 灸施術1週間前の冷水負荷試験により健常群と末梢循環不良群に分類した。 非利き手側の八邪 (Ex-UE9) に長生灸スモークレスを計4壮施灸し、 除去タイミングはベニヤ板上温度測定結果を基に、 皮膚上43℃到達時点または最高温度到達時点とした。 施灸から10分間の皮膚温をサーモグラムで測定し、 施灸側・非施灸側の5指平均を算出した。 施灸終了時に温熱感覚を7段階で聴取し、 温熱感覚および皮膚温の経時的変化を比較検討した。 【結果】温熱感覚および皮膚温の経時的変化は両条件間に有意差を認めなかった。 しかしながら、 皮膚温はいずれの条件においても施灸側・非施灸側ともに、 順応後に対して施灸直後に一過性低下を認めた。 また、 皮膚上43℃到達時点では、 健常群、 末梢循環不良群ともに施灸直後の有意な低下を認めた一方で、 最高温度到達時点では、 健常群のみ有意な低下を示し、 末梢循環不良群では認められなかった。 【考察と結語】台座灸を除去するタイミングの違いは、 温熱感覚や皮膚温には明確な差をもたらさなかった。 しかし、 除去時点にかかわらず施灸直後に皮膚温は一過性に低下したことから、 体温調節中枢の関与が示唆された。 また、 末梢循環不良者では温熱効果が発現しにくく、 個人の末梢循環機能が施灸反応に影響する可能性が示唆された。