全日本鍼灸学会雑誌
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原著
超音波画像診断装置を用いた低周波鍼通電時の筋収縮動態評価
前道 俊宏廻谷 滋古庄 敦也熊井 司
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2025 年 75 巻 4 号 p. 422-430

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抄録

【緒言】電気刺激は、 筋収縮の促進や筋力強化、 疼痛軽減などの目的でリハビリテーション領域に広く使用されている。 特に鍼灸分野では、 鍼を通じて体内深部に電流を流す低周波鍼通電療法 (Electroacupuncture:EA) が普及しており、 深部への直接的な刺激が可能とされている。 しかし、 EAによる筋収縮動態に関する詳細な評価は十分に行われていない。 本研究では、 超音波画像診断装置とモーショントラッキング (Motion Tracking) 技術を用いて、 EA施行時の筋・脂肪組織の横方向の移動を定量的に評価し、 部位ごとの動態の違いを明らかにすることを目的とした。 【対象と方法】対象は健康な若年男性7名であり、 右脚の腓腹筋内側頭にEAを実施した。 超音波診断装置で、 長軸方向で撮像し、 20秒間の動画を3回取得した。 動画はMotion Trackingソフトを用いて、 脂肪 (fat)、 腓腹筋浅層 (gastrocnemius shallow)、 腓腹筋深層 (gastrocnemius deep)、 ヒラメ筋 (soleus) の4領域における横方向の移動距離を算出した。 【結果】4部位間に有意な差が認められ、 中でもfatに比べてgastrocnemius shallowおよびdeep、 soleusにおいて移動距離が有意に大きかった。 これにより、 EAが筋および筋膜組織の横方向の動態に顕著な影響を与えることが示唆された。 さらに、 fatとshallow間の滑走距離 (DF: deep fascia)、 deepとsoleus間の滑走距離 (DIF: deep intermuscular facia) を定義し、 滑走性を比較した。 その結果、 DFとDIF間での滑走距離にも有意差が見られ、 DIFの方が大きかった。 【考察】本研究は、 EAによる筋収縮動態を客観的に可視化した初の試みであり、 EAの適切な応用方法の確立や治療戦略に貢献する可能性がある。 今後は他の筋群や刺激条件に関する研究を通じて、 臨床応用の幅をさらに広げることが期待される。

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