2026 年 76 巻 2 号 p. 131-137
【目的】妊娠中から産後にかけて遷延していた仙腸関節部の痛みが悪化し、日常生活に支障をきたしていた女性に対して鍼灸治療を行ったので報告する。【症例】40歳代の女性。主訴は仙腸関節部の痛み。X-7ヶ月に第2子を出産。産後半年を待たずに職場復帰をした。X-1ヶ月、第2子妊娠中から抱えていた仙腸関節部の痛みが悪化し、育児・家事がままならない状態が続いている。A病院を受診し仙腸関節障害と診断され、処方された鎮痛薬や湿布等で経過観察するも改善がみられないため、B大学附属鍼灸センターを受診した。坐位姿勢や前傾姿勢の保持が最もつらく、最大圧痛部は仙腸関節部に限局していた。ペインスケール(Pain Scale: PS)は7、仙腸関節障害スコアは7点、指床間距離(Finger-Floor Distance: FFD)は+51cmであった。鎮痛と腰殿部の筋緊張緩和を目的に鍼灸治療を開始した。患者は鍼灸治療の経験者であったが、鍼特有の感覚が苦手であるとの申告を受け、使用鍼はより細い鍼を選択、刺入深度は切皮程度、強刺激や切皮痛を避けて局所のみに施術するなどの治療計画を共有し同意を得た。【経過】2診目に「筋が緩んだ感覚がしてかなり楽になった」とのコメントが得られ、5診目には服薬や湿布薬が必要なくなり良好な経過を辿ったが、9診目に週末の育児による症状の増悪がみられた。しかしその後は快方に向かい、15診目にはPSが1、仙腸関節障害スコアが2点、FFDが+6cmとなった。当初あった仙腸関節周囲の痛みはほぼなくなり、日常生活にも支障がなくなったため治療終了となった。【考察・結語】妊娠中から遷延していた仙腸関節部の痛みを訴える症例に対して鍼灸治療を行なったところ、速やかに痛みの軽減が認められた。このことから、産後の仙腸関節障害に対して鍼灸治療は有用であることが示唆された。