全日本鍼灸学会雑誌
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脳血管障害に対する各種治療法の臨床効果比較
特に3つの鍼治療法と運動療法について
篠原 鼎
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1989 年 39 巻 4 号 p. 413-425

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抄録

中国における脳血管障害の治療法に, 頭皮鍼療法, 眼窩鍼療法, 醒脳開竅法がある。3つの鍼治療法とも, 急性期から後遺症期を含めた総有効率は, 約90%と高いが, 急性期から後遺症期を含めた全癒率は, 5%~58%と開きがある。脳梗塞の全癒率は, 頭皮鍼療法では47%で, 醒脳開竅法では58%で, 約10%の差がある。脳出血の全癒率は, 頭皮鍼療法では5%で, 醒脳開竅法では47%で, 約40%の差がある。眼窩鍼療法による全癒率は, 脳梗塞と脳出血を含めて24%である。加齢による全癒率の低下傾向は特にない。
脳梗塞の急性期の全癒率は, 頭皮鍼療法では65%で, 醒脳開竅法では65%で, 同じである。また3か月以内 (急性期と安定期と回復期を含めたもの) の全癒率は, 頭皮鍼療法では56%で, 醒脳開竅法では58%で, 差がない。脳梗塞の後遺症期の全癒率は, 頭皮鍼療法では39% (4か月以上~11年以上を合計したもの) で, 醒脳開竅法では46%で, やや差がある。したがって頭皮鍼療法や醒脳開竅法は, 現代の脳梗塞の後遺症治療として期待できる。しかし, あくまでも急性期に行うことが, 治療効果を引き上げる。しかも醒脳開竅法のデータは, 頭皮鍼療法のデータと比較して, データ数が1桁上位なので, より信頼性が高いと言える。脳出血の急性期の全癒率は, 醒脳開竅法では55%であり, また脳出血の3か月以内の全癒率は, 醒脳開竅法では47%であり, さらに脳出血の後遺症期の全癒率は, 醒脳開竅法では27%であり, 醒脳開竅法は, 現代の脳出血の後遺症治療としても期待できる。しかし, あくまでも急性期に行うことが, 治療効果を引き上げる。
3つの鍼治療法に共通している特徴は, 四肢等の障害部位に対して直接深部を治療し, 残存機能の最大利用を狙うだけではなく, あくまでも大脳中枢の血栓部位や出血部位に対しては, 遠隔的に刺激を与え, 四肢等の障害部位に対しては, 直接的に刺激を与え, 改善する治療法である。

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