1990 年 40 巻 2 号 p. 206-212
われわれは, 経絡経穴現象を客観的に理解する目的で, サーモグラフィを用いて健常者と片麻痺の神門穴鍼刺激による舌尖部の表面温度の変化について比較検討した。
その結果, 神門穴鍼刺激による舌尖部の表面温度は, 無処置群に比し健常者は上昇し, 片麻痺では健常者とは異質の反応パターンを認めた。先にわれわれは, 上肢の経穴鍼刺激で腹部の体表温が特異的に変化する現象を観察し, この現象が非経穴鍼刺激では認められないことから, 経絡経穴現象を想定させる現象であることを報告したが, 本結果は上記報告の信頼性を増す事実といえ, その背景因子に中枢神経系機能の介在が示唆されたものと考える。