抄録
全日誌発刊 (1982年32巻1号)から, 1991年現在 (41巻2号) までを調査したところ, 統計処理を行っている169報告中, 164報告 (97%) は何等かの統計処理の問題があった。その中で基礎の105報告中は99報告 (94%), 臨床の64報告中62報告 (97%) は, 両者の区別なく同程度に統計誤用があった。
最も多い問題点は多重性の問題で, 問題のあった全報告 (164) のうち45% (73) も統計誤用があった。次が, 検定法, 解析方法無記載が19% (31/164), 群内検定で結論を出してしまっている報告13% (22/164), 有効率の提示のみで不確実性指標がない報告14% (23/164), そして無作為化の保証が無い報告12% (19/164) であった。全体では18項目のチェックポイントがあるが, その他は統計誤用は各々10%未満であった。
ただし, これは各報告に複数の問題があるので, 全体の集計は100%を越える。
比較的結果に大きな影響を及ぼさないと考えて, 検定法・解析方法無記載19%と, 有効率の提示のみで推定がないもの14%を除いても, 統計処理を行っている雑誌全体の62%に統計誤用があることになる。
論文著者の側からみると, 11人の著者で全体の30% (49報告) の問題を起こしている。つまり同一人が3~7報告, 繰り返し誤りや問題を起こしている。この中で多重性の問題があるのは91%, 次が群間で比較すべきを群内検定しているものが55%と, 目だっている。