全日本鍼灸学会雑誌
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42 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 小林 和子
    1992 年 42 巻 2 号 p. 165-168
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ラットの臀部筋肉に針通電刺激 (5Hz, 3~5mA) を15分間与えた後, 3時間経過後に刺激部筋肉を摘出, ホモゲナイズおよび遠心分離し, タンパク質を抽出した。また, ラットに灸刺激 (モグサ, 10mg, 10回) を15分間与えて同様に処理した。これらの蛋白質の二次元電気泳動を行った結果, 分子量70000 (p70), 85000 (p85), 100000 (p100) のストレスタンパク質 (hsp) が認められた。この3種のタンパク質のスポットを画像解析装置で分析した。対照タンパク質に対するp70, p85, p100の比は, 針通電刺激の場合, 4.5%, 17.4%, 1.0%で, 灸刺激の場合, 6.8%, 20.8%, 1.2%であった。各々のストレスタンパク質の対照タンパク質に対する比は, 両者の場合, ほぼ等しい傾向を示した。
  • 河内 明, 角崎 憲一, 篠原 理恵, 井上 琢磨, 豊田 住江, 北出 利勝, 兵頭 正義
    1992 年 42 巻 2 号 p. 169-173
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    われわれは, 新しく開発された「BODYSONICPAD を併用した低周波置鍼療法」について検討した。BODYSONICPAD は, 診療ベッドが音楽の重低音域で微かに振動し、患者はその音楽を共に聞きかつ体感するものである。これに鍼治療を併用した効果について今回検討した。
    対象と方法は, 当麻酔科を訪れた慢性の肩凝り患者30名を対象とした。これらの患者を無作為に, (1) 音楽のみ (M群), (2) BODYSONICPAD のみで音楽なし (B群), (3) BODYSONICPAD (MB群), (4)従来の3Hz連続波低周波置鍼療法 (L群), (5) BODYSONICPAD 併用3Hz連続波低周波置鍼療法 (MBL群) の5群に分け, 直後効果と治療中の快適度を比較した。肩凝り症に用いた処方穴は, 使用頻度の高い肩背部の局所穴を基準とした。30ミリ20号鍼を用い, 通電時間は20分間とした。音楽の種類は主にクラシックで, 患者の好みに応じて用いた。効果判定は, 患者の自己評価から4段階 (著効・有効・やや有効・無効) に分け,「著効」+「有効」を改善例とした。なお快適度は11段階に分けて評価した。
    直後効果の改善率は, 30名中, M群7例 (23%), B群6例 (20%), MB群10例 (34%), L群18例 (60%), MBL群23例 (77%) となった。すなわち, BODYSONICPAD 併用低周波置鍼療法 (MBL群) は, M群・MB群などの群間の比較において統計上有意差をもって効果が認められた。なお快適度の平均値 (VAS法において最も不快を0とし, 最も快適を10とした場合) は, M群6.3±2.1, B群6.0±2.1, MB群7.0±1.6, L群7.2±1.9, MBL群8.3±1.6となり, MBL群 (BODYSONICPAD 併用低周波置鍼療法) が他に比べてやや優れていた。
  • 酒井 正
    1992 年 42 巻 2 号 p. 174-180
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    花粉症は東洋医学的にみると肺経・大腸経の異常ととらえた筆者は関係諸穴に施灸し, その治療効果を第1報において報告した。今回は灸療法群及び抗アレルギー剤を使用した薬物療法群とで各症状がどの様に変化したか比較検討した。対象は杉花粉症患者14名で灸療法群の施灸部位は, 大椎及び左右上肢の肺経・大腸経から圧痛・硬結等の反応点を一つ選び計三ヵ所とした。その結果灸療法群は薬物療法群と同様に花粉飛散数の多い日においても各症状が増強されず安定しており, 施灸が花粉症の各症状を抑えるのに有効であったと考える。
  • 腰痛患者の下肢知覚・深部反射所見と圧痛出現率の検討
    石丸 圭荘, 池内 隆治, 松本 勅, 行待 寿紀
    1992 年 42 巻 2 号 p. 181-185
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    我々は鍼灸臨床において診察点および治療点として汎用されている圧痛の臨床的意義を明らかにするため腰痛患者と健常者の腰下肢の圧痛出現率を調べ, 腰痛患者は健常者に比して圧痛が有意に多く出現し, かつ著明な圧痛が多いことをすでに明らかにした。
    今回は腰痛患者を対象に, 神経学的検査 (アキレス腱反射, 膝蓋腱反射, 下肢知覚検査) を指標にした神経学的検査異常群と正常群との間の圧痛出現率の相違について検討した。
    その結果, 下肢知覚・深部反射低下群において腰椎棘突起直傍部, 梨状筋部, 下肢の腰仙骨神経後枝, 坐骨神経の走行に一致して圧痛が有意に多く出現した。
  • 小川 義裕
    1992 年 42 巻 2 号 p. 186-192
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    足根管症候群に対し, 足根管部への刺絡抜罐手技の有効性を知るために17症例 (27足) に臨床的検討を行なった。治療方法として足根管部への刺絡抜罐手技及び長母趾屈筋等への単刺の単独治療と併用治療を比較検討した。結果は, 併用群で“著効, 有効”が81.3%を占め, 単刺単独群では27.3%であった。“無効”は併用群で1例 (6.2%) であったのに対し, 単刺単独群では27.7%であった。併用群では平均治療回数は2.3回なのに対し単刺単独群は5.7回であり, 併用群でより即効的であった。これ等の結果は足根管部への刺絡抜罐手技の重要性を示している。また, 鍼治療は特発性と思われる本症に対しより有効的な傾向が認められた。症例数が少なく, 比較試験も不十分ではあるが, これまでの結果より足根管部への刺絡抜罐療法が足根管症候群に対し有効な治療法であることが判明した。
  • 七堂 利幸
    1992 年 42 巻 2 号 p. 193-198
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    全日誌発刊 (1982年32巻1号)から, 1991年現在 (41巻2号) までを調査したところ, 統計処理を行っている169報告中, 164報告 (97%) は何等かの統計処理の問題があった。その中で基礎の105報告中は99報告 (94%), 臨床の64報告中62報告 (97%) は, 両者の区別なく同程度に統計誤用があった。
    最も多い問題点は多重性の問題で, 問題のあった全報告 (164) のうち45% (73) も統計誤用があった。次が, 検定法, 解析方法無記載が19% (31/164), 群内検定で結論を出してしまっている報告13% (22/164), 有効率の提示のみで不確実性指標がない報告14% (23/164), そして無作為化の保証が無い報告12% (19/164) であった。全体では18項目のチェックポイントがあるが, その他は統計誤用は各々10%未満であった。
    ただし, これは各報告に複数の問題があるので, 全体の集計は100%を越える。
    比較的結果に大きな影響を及ぼさないと考えて, 検定法・解析方法無記載19%と, 有効率の提示のみで推定がないもの14%を除いても, 統計処理を行っている雑誌全体の62%に統計誤用があることになる。
    論文著者の側からみると, 11人の著者で全体の30% (49報告) の問題を起こしている。つまり同一人が3~7報告, 繰り返し誤りや問題を起こしている。この中で多重性の問題があるのは91%, 次が群間で比較すべきを群内検定しているものが55%と, 目だっている。
  • 森川 和宥, 石神 龍代, 岡田 明三, 形井 秀一, 北出 利勝, 木下 滋, 黒野 保三, 鈴木 太, 堀 茂, 渡 仲三
    1992 年 42 巻 2 号 p. 199-207
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    (社) 全日本鍼灸学会学術部では, これからの西洋医学との融合を考えたとき, 鍼灸治療の範疇を知る必要性から「鍼灸治療の適応と限界」について調査, 検討を行っている。
    今回は, 医学的根拠を問わずに, 会員の先生方が日常の鍼灸治療を行っているなかで, どのような疾患が鍼灸治療に効果があると思っておられるかについて, アンケートによって意識調査を行った。
    回収数は返信回答が239名, 手渡し回答が184名であった。
    その結果, 鍼灸師の回答が多く, 93.2%を占め, 開業しているのが70.2%であったが, 勤務鍼灸師も44.0%を占めていた。
    効果判定では, 主訴と生体反応がともに変化があったと答えたものが50.9%を占めた。臨床を通じて鍼灸治療が効くと思っている疾患は, 腰痛・84.9%, 肩こり・77.3%, 五十肩・75.0%, 膝痛・66.2%, 頸腕症候群・63.7%, 坐骨神経痛・68.5%などで, 鍼灸治療の適応疾患といわれているものと, ほぼ一致した。
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