日本臨床麻酔学会誌
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—日本臨床麻酔学会第23回大会—
パネルディスカッション—深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症の予防・治療戦略—
予防的抗凝固療法と局所麻酔
高崎 眞弓
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2004 年 24 巻 9 号 p. 488-495

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抄録
硬膜外麻酔が普及して全麻酔症例の1/3に利用されている. 腰部硬膜外麻酔は深部静脈血栓症の発症を予防する. しかし, 周術期における深部静脈血栓症や肺塞栓症の発症は増えている. これら静脈血栓塞栓症を予防するために, 下肢に弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法を利用する. さらに高リスク患者には未分画ヘパリンを使用する. 抗凝固療法と硬膜外麻酔を併用すると, 硬膜外血腫を発症することがある. 初発症状は, 背部痛または根刺激症状で, 感覚運動麻痺, 膀胱直腸障害へ発展する. MRI検査で診断して8時間以内に脊髄の除圧を行うと神経機能の回復はよい. 硬膜外血腫は15万回の硬膜外穿刺に1回程度と考えられているが, ヘパリンを使うと発症は増える. 対応策として次のようなことがあげられる. 硬膜外穿刺後1時間以内はヘパリンを使わないこと, 術後鎮痛には麻痺の少ない鎮痛法を用いて発見を容易にすること, カテーテル抜去の前2~4時間はヘパリンの投与を止めること, 抜去後も神経学的観察を怠らないことである. 低分子量ヘパリンには静脈血栓塞栓症への適応はない.
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© 2004 日本臨床麻酔学会
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